【違反建築物】用途制限違反:用途が異なる・外壁の後退距離の事例
売却しようと思った時、購入しようと思った時、その建物が建築基準法違反の違反建築物だった!なんてことになると大変です。
ですが、世の中にはたくさんの違反建築物があります。今日はその中で「用途制限違反」という建築について素人でもわかるわかりやすい事例を紹介します。
違反建築物は購入する際に金融機関の融資が降りませんので売却する際にも非常にハードルが上がるため、売却を検討されている方も知っていて損のない知識です。
札幌市の用途地域と用途制限
市街化区域内に設定されている「用途地域」というものがあります。
用途地域とは建築できる建物の種類や用途の制限(使い方の種類)を定めたルールのことです。
用途地域は全ての土地に定められるわけではなく、都市計画法により都市の環境保全や利便の増進のために「市街地区域」と「非線引き区域」「準都市計画区域」に設定されるものであり、用途地域は大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分かれ、さら12種類のエリアに分かれています。
その用途地域毎に設定されている各種制限を「用途制限」と言います。
本ブログ記事では居住系用途地域の一つ「第一種低層住居専用地域」での事例をご紹介いたします。
第一種低層住居専用地域は低層住宅の良好な環境を守るための地域であり、いわゆる閑静な住宅街のイメージです。
最も「制限が厳しい」エリアであり、建物の高さ、店舗などの事業をおこなうにあたっても制限が厳しくあります。
この記事は、実際に現地の調査に行き、その後役所で各種調査をしたところ違反建築物であると確定した実際の事例をご紹介します。
①事例1:建物の用途が違う
建物の登記簿謄本を取得したところ、「住居・事務所」と用途が設定されています。
実際に現地に行くと、1階はまさに事務所や倉庫といった造り。
2階には浴室やシンクなどもあり、畳をひいた和室もあります、住居として考えられます。
この段階では「うん、大丈夫かな?」と思っていました。
「とりあえず市役所で確認申請や完了検査がされているか調べてみてからだな!でも、事務所としての面積が広すぎるような・・・1種低層住居専用地域の場合「一定の兼用住宅」はOKの規定はあるけど、ここまで面積が広いとアウトなのでは・・?」
②隣地境界線から建物の外壁距離が近い
外周をぐるりと回り、外壁をチェックしたり境界標をチェックしていました。
「なんか、狭いぞ」
「隣地境界線から1m離れていないような・・・」
ここでも不安がよぎります。
上記図面、左側の境界側には一部車庫のようなものを解体した跡がありました。
現地に同行していただいた所有者法人の担当者様曰く、「隣地の方から距離が近いからと言われて解体したらしいです」とのこと
これはどうやら確定なのでしょう。
ですが、ここまでは序の口。
さらにこの物件には大きな、、、とてつもなく大きな違反がありました。
③建築確認申請の内容と異なる意図的な建築違反物件
札幌市役所の窓口で、この建物の新築時の建築確認申請、完了検査がなされているかどうか、建築概要書を取得しに行きました。
窓口の方に住所などをお伝えするとパソコンで調べてくれるのですが、、、
まず、「検査済証」はありませんでした。
ここまでは、たまにあります。
完了検査を行っていない検査済証のない物件は結構たくさんあるのです。
ですが、こちらの物件は・・・
確認申請時の建築概要書を確認したところ、登記簿謄本に記載のある面積より圧倒的に少ない。
1階ワンフロア分 足りないのです
どういうことでしょうか?答えはこういうことです。
先程も説明をしましたが、現地調査で建物の中を確認したところ、広々とした1階事務所部分、2階には住居っぽい部分がありました、そして、、、
地下室がありました。大変便利そうな広大な地下室です。
なんせ1階ワンフロアと同じだけのサイズです。
「これはすごいですね、在庫を抱えたり工具をたくさん保管するような業種にピッタリですね!」と現地でお話をしておりましたが、まさかの
「申請していない建築部分」でございました。
ある意味最も重大な違反行為です。
申請の際に行政を騙して、建築をしてしまうという行為です。
さらに確認申請では「専用住居」となっておりました・・・
何から何まで・・・異なります(-_-;)
結論:建物が存在している状態では売れない
売主様にとって何が一番良いかを模索しましたが、建物を解体して土地として売出しするのが一番良いのではないかと提案をさせて頂きました。
賃貸収益物件として貸出をして収益を上げる、という方法も考えましたが、立地的に需要がかなり低い、金額も高値で貸出できないと予想される、違反建築物なので一棟借りの需要が多い、高齢者住宅、や障害者デイなどの許認可事業は全てNGであること。そもそも用途制限で事務所や店舗に対してかなり制限があるのでやはり客付きは悪いと予想されるのでやめたほうが良い。
「違反建築物です!」としっかりと謳い、理解した上で現金で購入される方がいれば売却することもできますが、購入者にもリスクがかなりありますのでこれもほぼ現実的ではない。
ということで、解体をしてから売り出す、もしくは解体更地渡し条件で売り出す方向はいかがでしょうか?というご提案となりました。
幸いにも住宅用地としてニーズはあるエリアですので、相場なりの価格設定にすれば早期売却が可能な物件ですのでその方向でご検討いただくことになりました。
中古物件を購入する時は特に注意しましょう!
一見普通に見えても違反かも?
建築基準法は本当に難しい法律ですし、かなり専門的知識が必要です。
我々不動産業者でもわからず、役所や建築士さんに確認することもたくさんあります。
購入を検討されている物件に違反がないかどうかしっかりと担当の業者さんに確認をして違反建築物を購入しないように注意しましょう!

関連した記事を読む
- 2023/09/05
- 2023/09/04
- 2023/05/02
- 2023/04/12